空き家の現状については前回の記事で述べた通り、都市部やマンションにも影響を与えています。このままの状況が続けば、個人への負担が大きくなることは容易に推測されます。
では、空き家問題の原因とはどのようなものが考えられるでしょうか。本記事では、その内容を簡単に解説していきます。
空き家が問題視される原因
空き家が増える要因としては、住宅が増え続けるだけではなく、単に世帯数が減ることでも起こり得る現象です。住宅が建てられなくとも、住む人(世帯)が減れば、空き家は自ずと増えていきます。しかし、現状は核家族などにより世帯人員は減っているものの、世帯数は増加傾向にあるのです。(下図)
世帯数及び1世帯当たり人員の推移(昭和45年~平成27年)
【引用:総務省統計局 平成27年国勢調査 -人口・世帯数(速報値)より】
つまり、空き家問題では世帯数の増加以上に住宅が増えているということがポイントになります。
新しい住宅が増える一方で、空き家となった住宅が減らない原因は様々です。ここでは、空き家になってしまう原因について解説していきます。
世帯数の増加を上回る住宅数
国土交通省の平成29年度の調査結果によると、下表のように世帯数も住宅総数も増加傾向にあります。特に、平成10年では世帯数と住宅総数の差異が5886に対し、平成25年では8176と明らかに住宅の方が多くなってきています。
平成10年 | 平成15年 | 平成20年 | 平成25年 | |
---|---|---|---|---|
総世帯数(単位:千) | 44,360 | 47,255 | 49,973 | 52,453 |
住宅総数(単位:千) | 50,246 | 53,891 | 57,586 | 60,629 |
戸数/世帯 | 1.13 | 1.14 | 1.15 | 1.16 |
(引用:国土交通省 平成29年度住宅経済関連データ「世帯数及び住宅戸数の推移」)
買う借りる側も貸す売る側も、そして不動産会社も、やはり新築物件へのメリットが大きいゆえに増加していると考えられます。
資金不足のために中古物件の選択肢もありますが、新築物件への人気やオーナー側や不動産会社の利益をふまえると、どうしても新築住宅が増えやすい状況ではあります。
新築住宅と解体住宅の比較
古いものより新しいもの、使用感のある家よりも綺麗な家を、人々は好みます。費用面を省けば、誰もが新築物件に憧れを抱くものです。このこと自体には問題はありません。しかし、新しい家が建つにも関わらず、不要な家は一向に無くなりません。この点が空き家を増加させる原因でもあります。
下表は国土交通省のデータです。新しく建てられた家に対し、解体された家の数はあまりにも少なすぎます。世帯数よりも住宅総数が過剰に増え続けているのは、やはり新築住宅の重要が高いことが要因です。
(単位:千) | 平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 |
---|---|---|---|---|---|
新設住宅着工戸数(新築) | 893 | 987 | 880 | 921 | 974 |
滅失戸数(解体) | 125 | 127 | 109 | 111 | 116 |
(引用:国土交通省 平成29年度住宅経済関連データ「新設住宅着工戸数の推移」及び「住宅の滅失戸数の推移」)
空き家になっても解体されない理由
滅失戸数が増えない原因は、主に個人所有である場合に大きく影響されます。理由は下記のような事情があるためです。
- 【費用】解体費用がかかり、固定資産税の影響で解体後は税金が多くとられてしまう
- 【付加価値】長く住んでいた家に思い入れがあり、壊すことを躊躇ってしまう
- 【再建築不可】建築基準法施行前に建てられた家は、解体後の土地に再建築するこができないケースがある
住宅の需要は減少傾向にある
世帯人員は減っているものの、世帯数は増加しています。しかし、このままの状態が続けば、それも次第に減っていくでしょう。
世帯数の減少は住宅の需要に大きな影響を及ぼし、新築住宅の増加と合わさると、住宅の過剰供給になるのが明らかです。つまり、未解決の空き家問題がある上に、住宅が売れない・貸せない状況に陥るわけです。
買い手・借り手がいない中古住宅
中古住宅はリフォームやリノベーションでユーザーを獲得しようとしています。しかし、ここに着目するユーザーは既に住宅を取得している層が多く、新規獲得は少ないです。費用を抑えつつ、より良い環境で生活することは魅力的ですが、品質が確かな新築住宅に劣る部分があることも否めません。中古住宅はあくまでも築年数が浅く、程度の良いものが決め手となっています。
ところが、一般的に住宅価値は、10年で大きく下がります。これに対し、住宅ローンの残高は返済開始時は減りにくい特性があります。よって、オーバーローン状態となり、売却しにくい状態に陥ってしまうのです。その上、新築住宅が増えることで、市場価値がさらに下がります。
また、木造の物件では築10年ほどで価値が半分ほど下がるのに対し、販売価格や賃貸価格が同様に半分になるわけでもなく、コストパフォーマンが悪くなってしまいます。その結果、買い手や借り手はデメリットを感じ、売れない・貸せない状態になってしまうのです。
最後に
買い手や借り手は少しでも質の高い綺麗な物件を好み、その需要に応えるように不動産会社やオーナーは利益優先で住宅を建て続けます。目先のメリットばかりを追いかけた結果、住宅総数は世帯数を上回り、解体されない住宅は放置され続け、現状に至るのです。
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